同じ失敗を経験しても、「自分はだめだ」と考える人もいれば、「次に変えられることは何か」と考える人もいます。起きた出来事は同じでも、受け取る意味は一つではありません。
物事を見る枠組みを変え、別の意味や選択肢を探す方法を、リフレーミングと呼びます。
リフレーミングとは何か
リフレーミングとは、出来事や状況を見る枠組みを変え、別の捉え方を加えることです。事実そのものを書き換えるのではなく、その事実をどの角度から見るかを変えます。
この考え方は、心理療法やコミュニケーションの分野で使われてきました。ポール・ワツラウィックらは、同じ状況に別の枠組みを当てはめることで、その状況が持つ意味を変える方法として整理しています。
たとえば、予定どおりに仕事が終わらなかったとする。「自分には能力がない」と見ることもできるが、「見積もりに無理がなかったか」「途中で何が増えたか」と見ることもできます。後者は失敗を否定せず、次に確認できる点を増やしています。
人は出来事をそのまま見ているわけではない
人は、過去の経験、信念、価値観、そのときの感情を通して出来事を解釈します。その解釈の枠組みをフレームと呼びます。
締め切りに間に合わなかったとき、「また失敗した」という考えが浮かぶかもしれません。それも一つの解釈ですが、繰り返していると事実のように感じられることがある。
リフレーミングでは、最初に浮かんだ考えを否定するのではなく、「これは事実か、それとも解釈か」と確認します。そのとき、他の見方も同じ出来事に当てはまるなら、選べる反応が増えるでしょう。
無理に前向きになることとは違う
リフレーミングは、つらい出来事を何でもよいことへ言い換える方法ではありません。悲しさや悔しさをなかったことにすると、現実から離れた言葉になってしまうからです。
「失敗してつらい」という感情を認めたうえで、「次に変えられることはあるか」と別の問いを加える。最初の見方を消すのではなく、もう一つの見方を並べることが大切です。
また、責任や危険を軽く見るために使うものでもありません。問題がある状況では、意味を変えるより先に、安全を確保したり、必要な支援を求めたりすることが優先されるでしょう。
別の見方が浮かばないこともある
強い不安や怒りがあるときは、別の見方を考えること自体が難しくなります。そのときは、すぐに捉え直そうとせず、感情が少し落ち着いてから考えてもかまいません。
長く使ってきたフレームは、思考の習慣になっています。はっきり言って一度問い直しただけでは変わらなくても不自然ではありません。
そんな自分だけでは同じ考えに戻ってしまうときは、信頼できる人に「他の見方はあるか」と聞く方法もあります。自分とは異なる立場から言葉をもらうことで、気づかなかった前提が見えることもあるでしょう。
日常で使える問い
嫌な出来事が起きたとき、すぐに前向きな見方へ変える必要はありません。まず、「実際に起きたこと」と「自分が加えた解釈」を分けてみます。
たとえば、返事が来ないという事実に対し、「嫌われた」と解釈しているかもしれません。そのときは、「忙しいかもしれない」「返信の内容を考えている可能性もある」と、同じ事実に当てはまる別の説明を一つだけ加えてみる。
自分への言葉が厳しくなっているときは、「親しい人が同じ状況なら、どんな言葉をかけるか」と問いかけます。これは、自分を甘やかすためではなく、状況に合った見方へ戻すための問いです。
今すぐ答えが出ない場合は、「今日決めなくてもよいことは何か」と考える方法もあります。時間の範囲を広げることで、目の前の解釈だけに縛られにくくなるでしょう。
リフレーミングでは、最も前向きな見方を選ぶ必要はありません。現実に当てはまり、次の行動を少し選びやすくする見方が一つ見つかれば十分です。
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まとめ
リフレーミングは、出来事そのものを変える方法ではなく、その出来事に当てはめている枠組みを見直す方法です。感情を否定せず、別の解釈を一つ加えることで、選べる反応が増えることがあります。
まずは今日、気になった出来事を一つだけ選んでみてください。「実際に起きたことは何か」「ほかに当てはまる見方はあるか」と書き分ける。それだけでも、いつもの解釈から少し距離を置くきっかけになるでしょう。
参考文献
Watzlawick, P., Weakland, J. H., & Fisch, R. (1974). Change: Principles of problem formation and problem resolution. W. W. Norton & Company.