ストレス社会の現代に身につけておきたい、ストレス対処法としての「コーピング」。
この記事では
- ストレスコーピングとは?
- 似た言葉との違い
- そもそもストレスとは?
- ストレスの基本モデル
以上について解説しています。ぜひ、最後までお読みください。
ストレスコーピングとは?
ストレスコーピングとは、アメリカの心理学者ラザルスによって提唱されたメンタルヘルス用語で、ストレスへの対処行動を指します。
英語のcope(対応する、対処する)から派生し、ストレス要因の解決もしくは負担を減らすことを目的としています。
コーピングを上手く使うことでストレスを排除、コントロールでき、日々のパフォーマンス向上に期待できます。ストレス耐性がついていき、精神疾患の改善に役立ちます。
似た言葉との違い
似た意味として挙げられるのは以下の3つ。
- 適応機制
- レジリエンス
- ストレスマネジメント
それぞれとの違いを見ていきます。
適応機制
意味は、ストレスから自分の心身を守るために働く本能的防衛反応。コーピングとの違いは「意識的」かどうか。適応機制は無意識にストレスに対処、コーピングは能動的にストレスに対処します。
レジリエンス
意味は、困難や脅威に対して「適応する能力」を指します。コーピングとの違いは「対応力」にあります。コーピングはストレスに対して、その対処に着目しますが、レジリエンスは本人の回復力、適応力に着目します。
ストレスマネジメント
意味はストレス管理。ストレスを管理する手段として、コーピング(ストレス対処)があります。
そもそもストレスについて考える
元々「ストレス」という言葉は「物体に圧力を加えることで生じる歪み」を意味する物理学用語でしたが、現在では精神的・肉体的な負担となる環境や刺激によって引き起こされる生体機能の変化(ストレス反応)を指すようになりました。
ストレスには3つの構成要素があります。
- ストレッサー
- 認知
- (ストレス)反応
それぞれ見ていきます。
ストレッサー
ストレスを感じるもとになる環境や外部からの刺激のこと。大きく分けて4つになります。
- 物理的 気温、騒音、労働環境や労働時間など
- 化学的 化学物質、タバコ、食品添加物など
- 心理的 怒り、孤独、不安など
- 社会的 人間関係など
認知
見たり、聞いたり、感じたりと、私たちの五感がストレッサーにより刺激された状態のこと。
(ストレス)反応
ストレッサーに対する防衛反応を指します。大きく分けて3つ。
- 心理面 イライラ、気分の落ち込みなど
- 身体面 痛み、疲れ、不眠など
- 行動面 飲酒や喫煙の増加、集中力の低下など
慢性的にストレッサーの影響を受けると、様々な悪影響を引き起こします。
ストレス理論について
心理的ストレスについて、上記で述べたラザルスが構築した認知理論があります。順番としては、ストレッサー→ストレス→コーピングを踏みます。
詳しくいうと、人間のストレスに対する評価は、まず、ストレッサーに対して行われ(一次的認知評価)、次にストレス反応について行われます(二次的認知評価)。そして最後にコーピングへ繋がります。
ラザルスは、日常の小さな苛立ちを「デイリーハッスル」と名付けました。ストレッサーとなるものは人生を左右する大事件よりも、日々の生活で感じる小さな出来事への苛立ちと考え、研究対象として重要視しました。
- 通勤ラッシュ
- 学校や職場での人間関係
- 仕事上の小さなミス
例えば上記。
一時的認知評価
この段階で、ストレッサーが「自分とは無関係」と認知した場合は、ストレスを感じることはありません。
しかし「有害である」と判断された場合、「ストレスフル」と認知され、二次的認知評価へと進みます。
二次的認知評価
二次的認知評価では、一時的認知評価で上がってきたストレッサーを対処できるかを判断します。
「対処する方法を把握しているか」で判断する、結果期待と「対処方法は実現可能か」で判断する、効力期待の2つがここでは認知されます。
上記2つとも対処可能と判断されると、ストレスは和らぐ(コーピングが可能と判明する)が、どちらかの対処が不可能と判断された場合、ストレスがさらに高まります。
コーピングの種類
大きく分けて3つ。
- 問題焦点型
- 情動焦点型
- ストレス解消型
順番に見ていきます。
問題焦点型
ストレスの原因(ストレッサー)を解決することに重点を置きます。自分がストレスを感じる状況から抜け出せるよう行動します。
例えば対人関係で悩むなら、相手の人に直接働きかけて問題解決を図るようなアプローチを取ります。
どんなときに使うかというと、解決すべき重要な問題でストレスを感じている場合。またどっちにしろ逃げられない問題に対処するときに有効です。
対処法
- 問題そのものへの対処
- 身近な人への相談
- 自分の捉え方・考え方の修正
- 向き合い方を変える
具体的行動例
- 人間関係や環境を変化させて原因となる物事から遠ざかる
- 家族や友人、上司や同僚などにアドバイスをもらう
- より人と接するようにする
デメリット
- 実行が肉体的、精神的にも難しい
- 無理に考えを変えることによるストレス
- 人を巻き込む
情動焦点型
ストレス原因に対する考え方や感じ方を変え、感情のコントロールに重点を置く。
自分が感じるストレス反応に対してアプローチします。自分の意識を変化させ、気持ちに整理をつけます。
どんなときに使うかというと、問題そのものの解決が難しい場合や、解決に時間がかかる場合が挙げられます。
対処法
- ネガティブな考えをしない(=楽観的)
- 認知を変える
- 自分だけの時間を持つ
- 気晴らし
具体的行動例
- 物事のポジティブ面を考える
- たまには「そういうもの」と、大雑把に捉える
- スケジュールを作る
- ショッピング
デメリットは、根本的解決にならないこと。
ストレス解消型
ストレスを解消させるため、問題から離れてストレスを出したり、発散させること。
対処法としては、気晴らしやリラックスが考えられます。
具体的行動例としては、趣味を行うことやマッサージが挙げられます。
コーピングの効果的なやり方
手順は2つ。「リスト化」と「行動&モニタリング(判断)」です。
リスト化
ストレス軽減や解消につながる方法や行動をまとめる手法(コーピングリスト)です。
「これは試してみよう」「これはストレスに効くのではないか」というものを挙げていきます。
数が多いほど(100以上が目安)効果があり、ちょっとでもストレス対策に有効と感じたら、リストに含めましょう。思いつくままで大丈夫です。
メリット
- ストレス対処法が明確になる
- ストレスにスムーズに対処できる
- リストを作成するだけでメンタルが強くなる
一般的にネガティブな印象(タバコ、酒)も何もないよりはマシですが、長期的な目線に立ちましょう。
行動&モニタリング(判断)
実際に行動していきます。ストレスを感じたときに自分が何を思うかを観察し、どの対処方法が効果的かを判断していきます。
- どんな身体的反応をしたか(頭が痛くなる、震えが出るなど)
- どのくらいのストレス強度か
- どんな種類のストレスか
上記を判断。
点数をつけて数値化すると、比較検討しやすくなります。
しかし、ストレスも様々なので、その都度どんな行動が適しているかを考えるといいでしょう。その際には上記の「コーピングの種類」も役立ちます。
2つの手順を繰り返して、どんどんリストに磨きをかけていく。状況を客観的に把握できるようになると、コーピングスキルの向上につながるでしょう。
【ストレスコーピング】まとめ
ストレス自体は現代では避けて通れないので、ストレスコーピングは知っていて損はないでしょう。
コーピングで積極的にストレスに対処するか、自分の認知を変えるかは人それぞれですが、その時々での対処法は異なります。
実生活での経験を踏まえた上で、ぜひ、自分に合ったコーピングを模索してみてください。
では、また。