少し印象が悪いことがあって、「今時の若者」「昨今のお年寄り」と一括りにしてしまう傾向に見られる「少数の法則」について解説。
原因と対策についても記載しています。ぜひ、最後までお読みください。
少数の法則とは?
少ないサンプルで得られた統計的な結果を、無意識に信頼し、一般化する人間の性質で、1971年にノーベル賞受賞者でもあるダニエル・カーネマンが提唱したとされます。
少数の法則の問題点は以下の2つ。
「たまたまそうなっただけを否定できない」
→そこに因果関係があると思い込んでしまう。
期待値に対し、都合のよい解釈をしてしまう。
→これくらいの期待値だから、「まあ、そうなるだろう」と根拠が薄くても思い込む。
そもそも、なぜ、サンプル数が少ないと信憑性が低くなるかというと、「大数の法則」が働くため。
大数の法則とは?
統計的データから物事を判断するとき、「試行回数が増えれば増えるほど、得られるデータは平均値に近づいていく」というもの。
よく挙げられるのは、表裏のあるコイン。試行回数10回よりも100回試すと表裏のコインが2分の1(平均値)に近づくことから。
逆を言えば、データ数が少ないと、正しいデータから外れる可能性が高くなります。
少数の法則の例として、以下の3つがあります。
- じゃんけんに連続して負けると「自分はじゃんけんに弱い」と思う。
- 数人の高評価レビューだけで、「商品の評判がいい」と思う。
- タバコのポイ捨てを見て、「最近の若者はけしからん」と思う。
【少数の法則】原因
主に3つあります。
ヒトはメッセージの内容そのものに注目してしまうから
→情報の信憑性には目が向きにくい。
ヒトは、事実を都合よく解釈しようとするから
→自分にとって、「こうなってはまずい」という利益が先にあり、不利にならないようにしたい。
ランダムな事象の中に規則性や秩序を見出すから
そもそも人生で出くわす現象はランダムで、人はそこにアプローチできません。
しかし、それでは「自分が無力である」という事実が突きつけられる。そうは望みたくない。
だから、何かしら規則や因果関係があると思い込んで(悪いことをすれば、必ず裁かれるなど)安心感を得ようとする。
【少数の法則】対策
批判的思考(クリティカルシンキング)が役立ちます。批判的思考とは、一言でいえば、前提条件が正しいか、疑う思考様式です。
- 母数はどのくらいか(数が多いか少ないか)
- 他の事例はないか
- そうならない可能性はないか
- なぜ、そういうことを言うのか(相手の狙いを考える)
例えば上記が考えられます。
相手が「サンプルを用いて、データを見せる」ということは、自分の主張を補強するためです。
その際、相手は不利になることを言う意味がありません。ただ物事には二面性(良い面と悪い面)があるものです。
わざわざ言う必要がないものもありますが、相手がなぜ、少ないサンプルを提示してくるのか(有名人の〇〇さんもご愛用は、厳密にいえば、数人)を考えるといいでしょう。
【少数の法則】まとめ
少数の法則の提唱者、ダニエル・カーネマンも昔は心理学の研究でデータを示す際にサンプル数にはあまりこだわらずにデータを集め、それを発表していました。
しかし、彼はある時「心理学者の研究は、データが少なく信憑性が低い」という記事を読み、そこで自分の研究を反省すると共に、他の心理学者の研究について調査を始めました。
結果として、多数の心理学者の研究がデータ不足で、それにも関わらず多くの人がその研究を信頼している、という事実に気づきます。
このような流れで「少数の法則」は提唱されることとなります。少数の法則は意外と応用範囲が広い。
なぜなら世にある成功例の裏には、「失敗例」「とくに効果がなかった」例も存在しているからです。
- 「あなたも〇〇で素敵なプローモーションを」
- 「私もこの商品で〇〇になりました」
- 「このノウハウで〇〇な結果をあなたに」
このような謳い文句を見たら、その裏にいるであろう、サンプルの母数に想いを馳せてみてください。
では、また。