「夏休みに入って少しずつでも宿題をしとこうと思ったのに、結果的に後回しにしてしまった。」
このようなスケジュールの終了時間を見誤る、計画が狂う「計画錯誤」について解説。
実験や対策についても解説しています。是非、最後までお読みください。
計画錯誤とは?
物事の達成において、作業にかかる時間や必要な労力を実際より短く見積る傾向。
- 時間(早く終わる)
- 金額(安く済む)
- 労力(少なく済む)
- リスク(そこまで危険ではない)
例えば上記を見誤ります。
人は心理的ストレスを軽減するため、「楽観バイアス」と呼ばれる思考プロセスを持ちます。
楽観バイアスとは
自分の能力を高く見積り、都合の良い方に捉える傾向
作業時間を短く見積もる(楽観的予測)をするので、計画に錯誤が起こります。
このバイアスが強いと、過去に自分が類似のケースで失敗していても「今回はなんとかなるだろう」と甘く見積もってしまいます。
また他人の似た話も「自分には当てはまらない」と考えます。
【計画錯誤】実験
大学の心理学生に、完成した論文をいつ提出するか、できるだけ正確に予測するように回答を求めました。
さらに、2つのパターンで論文完成時期の予測を尋ねます。
全てが上手くいった場合の日数。(楽観的)
全てが上手くいかなかった場合の日数。(悲観的)
前者の見積もりは平均27.4日、後者の見積りは平均48.6日。しかし実際にかかった時間は55.5日間でした。
実際に見積もった日数で終わった学生は、楽観的で10.8%、悲観的で48.7%。
「全てが上手くいかない」と予測しても、実際の完了時間を過小評価する傾向がありました。
そして「悲観的な予測をする」という指示は、楽観バイアスを減少させましたが、回答者の予測の正確さを増加させることはありませんでした。
Exploring the "Planning Fallacy"
【計画錯誤】対策
対策は以下の3つ。
- 所要時間の正確な把握
- 小さな締め切りを設ける
- バッファ(余白)をあらかじめ盛り込む
順番に見ていきます。
所要時間の正確な把握
必要なタスクを洗い出し、1つ1つにかかる所要時間を書き出していく。すると、より正確に作業にかかる時間を予測できます。
ただその見積りもあくまで自分で出したもので、楽観的である要素を完全に排除できません。
なので過去の類似ケースを調べたり、第三者に意見を求めることで、計画を補強していく。
小さな締め切りを設ける
数ヶ月先を目標にしていたら「今日1日くらい」と心の余裕ができてしまう。
1週間を目処(1日だと気が滅入りやすい、1ヶ月だと同様に甘えが出る)に締切を設ける。
タスクを小さく洗い出していれば、1週間ごとに「何をすればいいか」も掴めるでしょう。
バッファ(余白)をあらかじめ盛り込む
「予定より時間がかかる、見直しが必要」などの想定外のケースに充たるため、時間的余裕をあらかじめ設けておきます。
その際に「何が障害になるか」を考え、対応策を考えておくと効果的です。
計画錯誤というバイアスに自覚的だからこそ、時間的余裕の必要性が感じられるでしょう。
【計画錯誤】まとめ
計画錯誤は、だらしなさや作業の遅さなど、性格や能力が原因ではありません。
そもそも計画錯誤という言葉を名付けたダニエル・カーネマン自身、教科書の執筆で計画錯誤に陥っていました。
将来への予測を楽観的に考えてしまう、人間の偏った考えにあります。
問題は計画、目標の組み立て方にあります。そして「方法論」である以上、改善が可能です。
ヒューマンエラーをどうにかするのではなく、「仕組み」で計画の錯誤を克服していきましょう。
では、また。