こんな疑問に答えます。
- 「あのとき、ああしてれば」
- 「この言い方きつかったかな」
- 「どうしてこんなにできないんだろう」
こういった思考が繰り返されることを「ぐるぐる思考」「反芻思考」と呼びます。
この記事では反芻思考の概要と、改善方法について解説しています。
ぜひ、最後までお読みください。
反芻思考とは?
そもそも「反芻」とは牛が胃から一度飲み込んだ草を口に戻しては何度も咀嚼する行為を指します。
それが自分の欠点や過去の失敗など、ネガティブな出来事を思い出しては落ち込むことを何度も繰り返す精神活動と似ていることから、名付けられました。
「反芻思考」はうつや不安の一番の原因(根本原因)と言われています。
イェール大学のスーザン・ノーレンホエクセマ氏の研究によれば、「反芻思考」の傾向が強い人ほど落ち込みやすく、ストレスから無気力になりやすいとのこと。
この動画でも1位です。
主なデメリットは以下。
- うつ病の深刻化
- 不安の増加
- 幸福感や満足度の低下
- 集中力や問題解決能力の低下
- 睡眠の質の低下
「悩みがあるときに他のことに身が入らない」という経験ありませんか。それは頭の容量が一部、使われることで問題解決が遅れているから。
物事がうまく進まず、それがまた新たな悩みを生む。その悩みがさらに反芻思考を増長させる。こんな悪循環に陥ります。
そして、反芻思考には2つの類型があります。リフレクション(内側の反芻思考)とブルーディング(外側の反芻思考)です。
リフレクションとは
「どうして自分は失敗を繰り返すのか」と自分の過去や内面に対して、逡巡(尻込み)する思考。
自分が落ち込んでいる原因や行動を分析するような反省的な思考なので、長期的には抑圧を軽減させることが研究で示されています。そしてうつ病との関係性も低いとされています。
ブルーディングとは
「どうしてこうならない。周りがこうなれば」と周囲の状況や環境に不満を募らせる思考。
外側という正解のない答えを抱え続けるため、リフレーションに比べてうつ病などの精神疾患を引き起こしやすい。
反芻思考の改善方法
まず大前提。「考えないようにする」ではなく別のことをするです。
私たちは「〇〇について考えない」と思うほど、そのことについて考えてしまう性質があります(心理学で『シロクマ効果』と呼びます)。
そのため、考えないようにするではなく、具体的に何かをすることを重視しましょう。
改善方法は以下の8つ。
- 自然に触れる
- 自分の好きなことをする
- 原因を避ける 距離を置く
- マインドフルネス
- 身体を動かす
- 紙に書き出す
- 自分に質問する
- 記録する
順番に見ていきます。上から順におすすめです。
自然に触れる
2015年のスタンフォード大学の研究によると、様々な男女を対象にアンケートと脳のスキャンを行い全員の反芻思考をチェックし、反芻思考のレベルをチェックした上で、90分ほど森の中を歩いてもらいました。
その結果、反芻思考の回数が明らかに減りました。悩むときによく使われる脳の前頭前野という部位の活動も低下。
ただ歩くだけで、余計なことに悩んだりクヨクヨすることが減りました。
この場合の森がどのぐらいの場所かというと、「自然があるな」と感じられるぐらいの公園(新宿御苑など)でも充分。
↓実験詳細
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1510459112
その他に
- 街路樹を見ながら歩く
- 写真で自然の風景を見る
- デスクに観葉植物を置く
- ペットの飼育
以上も「自然を歩く」ほどの効果は出ませんが、反芻思考の低下に期待できます。
一定時間でも反芻思考を止めれば、結果的に新しい解決策を見つけることができるという研究が多数あります。
そもそもなんで自然が効果的なのかを知りたい人は「バイオフィリア」で調べてみてください。(ここでは割愛)
自分の好きなことをする
自分の趣味が一番無難です。「自分の好きなこと」がなぜいいかというと、思考の棚上げといって、「また後で考えよう」というその場しのぎが有効だからです。
例としては「死」が挙げられます。「死」という概念を知ったとき、あなたは恐ろしかったことでしょう。
家族や周りの友人がいつかは目の前から消えてしまう。ただ今はそこまでクヨクヨ考えている人は少ないと思います。死は生きる者には必ず訪れるというのに。
その理由は数十年先への「思考の棚上げ」に過ぎません。そのおかげで「死」という未来ではなく「今」を生きられています。
この例で「先送り」が有効な理由はわかっていただけると思います。
何はともあれ、「〇〇について考えない」だけは断じてNG。
考えてしまう度に「ストップ」といい、「また考えてしまった」と内省を促すといいでしょう。
原因を避ける 距離を置く
場所や人が原因なら近づかない。心理的な距離を置くには、脳裏を去来するものに思考や感情という名前を与える方法があります。
具体的には「私には〇〇がない」ではなく「私は自分に〇〇がないと感じている」と置き換えるということ。
そもそも周囲が敵に見え、失敗を指摘してくるのではないかと思っているだけかもしれない。
実際には、周りはそれぞれ自分のことを考えているだけかもしれない。
基本的に他人は他人に無関心です。関係値がない人に注意を向けていたらキリがない。
今日、街中ですれ違った他人の服装を思い出せるだろうか。いちいち覚えているでしょうか。
せいぜい数人。何百人、何千人すれ違った中でです。
マインドフルネス
マインドフルネスとは、頭に浮かぶ思考や気持ちに気づき、今の状態をあるがままに受け止めることを指す言葉です。
反芻思考は思考が過去「あの時ああしとけば」から未来「〇〇と感じていたらどうしよう」に飛躍しているため、「今」の状態を見ていないと考えられます。
先に述べた、リフレーションも明るい未来を描くとはいえ、「今」を見ていないという点では同じといえます。
思考について、良し悪しは判断しない。「思うだけ」です。
考えることそのものを止めることは難しいので、浮かんできたことを考え、意識を集中させましょう。
「腹減った」と感じても受け流す。「子どもの泣く声がするな」と思っても受け流す。そこで何かをしようとは思わないことです。
また「注意訓練」という、今している行動に五感をフルに集中するのも有効。
食事において、味はもちろん、匂い、食感、咀嚼音や食器のカチャカチャとした音などに注意を向けることで反芻思考を止めることができます。
身体を動かす
適度に息が切れる程度を目指しましょう。具体例としては、ロッククライミングやボルダリングやキックボクシング。
なぜか。先に挙げたスポーツは、やる動作をしながら身体のバランスが求められます。
今この瞬間に集中する状態が強制的に発生するからです。
紙に書き出す
この時、「エクスプレッシブライティング」という手法が有効です。
エクスプレッシブライティングとは
自分が体験したネガティブな経験を、感情や思考を排除せずに書き殴ること。
主な効果は以下。
- ストレスや不安の低下
- 免疫力の向上
- 集中力の向上
- 睡眠の向上
ワーキングメモリという脳内のリソースを解放することで上記のメリットが得られています。
具体的方法や効果のほどは、以下のブログが参考になります。
https://yuchrszk.blogspot.com/2021/01/blog-post_8.html
https://daigoblog.jp/bullying-3strategy/
自分に質問する
メンタリストDaiGoさんの書籍『超客観力』で挙げられている手法です。
具体的にはWHY(なぜ)ではなくWhat(何)の質問をするというもの。
例 同僚の態度が気に食わない。
OK 同僚の何に腹が立ったのか?
NG なぜあんな嫌な態度を取ったのか?
私たちは「なぜそれが起きたのか?」と原因を考えがちです。
しかしそれは漠然としがち(理由が絞られない)で、答えがわからないことが多いです。
あなた個人への攻撃という理由もあるでしょう。ただ単に同僚は機嫌が悪かっただけかもしれない。
問い詰めるという、およそできないことも、相手が本当に真実を語っていると断言できない。
それに対し、「何」という質問では客観的視点が担保され、何が原因で、相手はこうしたのだろう?と考える。
そして、「これが原因そうだからやめよう」「こういう仕草が出たら、距離を取ろう」と具体的行動に発展しやすいです。
記録する
記録するものは自分の成功、失敗体験それぞれです。
「あの時の〇〇大丈夫かな?」と思ったら見返しましょう。
「あの時自分は何をした?相手はどう返したか?」を探ります。
すると、思い込みで実際は違うな。記憶違いだった、となるケースがあります。
そのためにはできれば詳細に記録しておくとベストです。思い出しすときも詳細に、そして事実を確認。
つらい事実に向き合う必要はありますが、そのおかげで感情をコントロールすることができるでしょう。
【反芻思考】まとめ
反芻思考を改善にするには、上記な方法に加えて、冷静な時に原因と向き合い、自分の思考の誤りや癖も確認しておくといいでしょう。
その際は完璧主義をなくす、自分の考えと相手の考えは果たして合っているかを考えると効果は高まります。
反芻思考という、ネガティブな感情や思考に捉われていることを知り、それを受け入れ、手放す。
私たちが学ぶべきはそのような「感情や思考への対処の仕方」といえるでしょう。
うつ病の認知療法の創始者であるアーロン・ベックが認知療法の目的について以下のように述べています。
「不安のコントロール法」を教えることではない。
一人ひとりの患者が「不安と戦う」のではなく「不安を受け入れる」態度を養うように導く。
不安はある。それは感じてしまう。だが自分は危険や恐怖を誇張している。そのことを理解する。
その結果として、不安の強さはやわらぎ、不安は少しずつ消えていきます。
反芻思考について詳しく知りたい方は以下の参照がおすすめです。
https://next-sapiens.net/mind/stress/rumination/
チェックテスト
https://world-of-tategami.com/rumination-test/
では、また。