「人が椅子に座る」「人がドアを引く」ではない。
椅子が「人に座らせる」を促す。ドアが「人に引かせる」を促す。
このような考え方でモノと人の関係性を見直す、アフォーダンス理論について解説。
具体的特徴と何に役立つかも解説しています。是非最後までお読みください。
アフォーダンス理論とは?
一言でいえば、人と物の間に存在する関係性。
モノや環境が持つ物理的特性が、有機体(人や動物など)から意味や価値を引き出させるという理論です。
心理学者のジェームズ・J・ギブソンの言葉で、「与える、提供する」の意味を持つアフォード(afford)を名詞化した造語です。
彼自身の論文(James J. Gibson,1977)の例
適度な大きさと重さを持つ細長い物体は、振るうことを促す。
クラブ、ハンマーなど
鋭い、またエッジを持つ硬い物体は、切ったり削ったりすることを促す。
ハサミ、カッターなど
適度な大きさと重さを持つ把持可能(握ること)な硬い物体は、投擲を促す
ボール、ミサイルなど
細長い弾性体は、結び、縛り、括り、編み、編むことを促す
紐や縄など
我々人間は、上記のようなモノの特徴から利用可能なもの(意味)を引き出して、生活を改善していっています。
【アフォーダンス理論】具体的特徴
一言でいえば、観察者のニーズによる変化に左右されないこと。同論文では、郵便ポストの例が挙げられています。
我々は年賀状や郵便物を送りたいとき(ニーズがあるとき)に、郵便ポストの存在が知覚されやすい。
これは現象的なもので、物理的に存在する郵便受けとは別の存在であると考えがあります。
ただ提唱者ギブソンからすると、郵便ポストはそもそもの意味と価値を持つと主張する。
本物の郵便ポスト(唯一)は、郵便制度のある共同体の中で手紙を書く人間に、手紙を送ることを可能にすると言った方がいい。
ポストの魅力が上がるのは、郵便物があるときであることは当然です。
ただポストは環境の一部として、私たちの住む地域のアイテムとして認識されていることも大きな事実。
したがって、郵便物のアフォーダンスと、それが持つ一時的な特別な魅力(送りたい)とを混同してはなりません。
アフォーダンスは何の役に立つのか
アフォーダンスはもともと価値、誘引、要求といった行動を促すもの(誘因)の概念から派生しました。
そこで追求されているのは「価値と意味とは何か」ということ。物質は人に「価値があるかないか」と知覚されるのではありません。
そもそも価値はあるが、それが利益をもたらすか損害をもたらすかは、行為者によって異なるだけ。
最終的な結果である「価値を感じる、感じないと知覚すること」は確かに変わりません。
ただアフォーダンスによる価値の新しい定義は、相互理解につながるでしょう。
自分の主観的体験からくる、価値や意味を絶対視せず、「誰かの利益には繋がっているんだな」と新しい発想が可能になります。
- 何でこんなものがあるのか
- 何でこんな機能がついているのか
- 何でこんなものに熱狂しているのか
個人的には理解できなくても、納得できる。
【アフォーダンス理論】まとめ
正統的な心理学において物体の知覚は、特性や性質を識別するためとされています。
心理学者たちは、これらの性質がどのように、またどの程度区別されるかを調べる。
しかし、幼児は、「物体の性質を識別し、次にそれを特定する性質の組み合わせを学習する」など始めていない多数の証拠を提示している。
物体のアフォーダンスは、幼児が気づくことから始まります。物質の色や形がそれとして見られる前に、その意味が観察されます。
考えてみれば、物質の特徴を知ったところで「自分には何の意味があるのか(安全か危険かなど)」を知らなければ価値を含め、その物質を規定できません。
そしてアフォーダンス理論は、環境やモノに含まれる価値や意味が直接知覚できることを意味する、ラディカルな仮説です。
この点を踏まえると、価値や意味が行為者の外部にある(主観的でも絶対的でもない)という意味も説明できるしょう。
では、また。