「どうせ、自分の利益を考えて行動しているだろう」。
この考え方に陥る人は、「ナイーブ・シニシズム」という状態にあるかもしれません。
この記事では、単語の説明とその原因、対策について解説。ぜひ、最後までお読みください。
ナイーブ・シニシズムとは?
自分以外は、「利己的に物事を判断し、歪んだ認識をしている」と考えること。
ここでいうナイーブは、「臆病な」という意味より「純粋な」の方で、シニシズムは冷笑主義(嘲け笑う)と訳されます。
背景には、似た言葉で「ナイーブ・リアリズム」という認知バイアスがあります。
これは、「自分は客観的に現実を認識し、偏見なく物事を理解している」と考える状態。
ナイーブ・リアリズムに陥る
しかし、偏見や差別は元に存在する
その理由は、自分以外は歪んだ考えをしており、自己中心的に振る舞うからではないか?
ナイーブ・シニシズムに陥る
もちろん相手も客観的に、「現実を認識している」と思うこともあります。
ただ簡単には、そう思わない理由があります。
【ナイーブ・シニシズム】原因
話は少し難しくなります。1つの論文が出てきます。
M. Ross and Sicoly (1979) は、このバイアスについて、自分と他人の貢献の可用性の差に基づく情報処理的な解釈を提示しました。
簡単に言えば、人は他人のインプットより、自分のインプットを思い出しやすいということ。
自分が犬の散歩や皿洗いをしたこと、または怒りを抑えたことを思い出すのは、妻(夫)や彼氏(彼女)がしてくれたことよりずっと簡単です。
自分の努力と相手の努力では、自分が「〇〇したのに」と思うことが多くなり、自分自身の相対的貢献を大きく評価してしまう。
重要なのは、他人の場合は今まで述べてきた貢献を、過剰な信用を得ようとする動機から考えてしまう。
ただ自分の場合は、善意や親切心など、やましい理由からではない(良い顔をしたいから)と主張します。
論文の参加者は、実際にそうであるかどうかにかかわらず、自分の判断において他者(自分ではない)が利己的であると期待しました。
【ナイーブ・シニシズム】対策
相手の善意も「ポイント稼ぎ」ではないかと、真の原因を誤認させる認知バイアス。
ただ、このような人々の軽蔑的な偏見を減衰できるものがあります。
それは協力的な内集団志向。研究では偏見を減衰、あるいは根絶できることを示しました。
内集団とは、自分が所属感を抱いている集団で、部活の同学年や同僚グループなどが例。
協力的な行動を何回も繰り返せば、「点数稼ぎではない」ケースも往々にしてあるでしょう。
研究室で最近行われた試験的研究では、夫婦の満足度がバイアスに関係することが示唆されています。
夫婦の満足度が高ければ高いほど、互いが利己的であることを期待しませんでした。
バイアス軽減において、以上から導き出されるのは、お互いがお互いを競争相手ではなく、ゴールに向かう協力者と考えることでしょう。
【ナイーブ・シニシズム】まとめ
人はどんな自然現象でも、偶然を考慮するより、因果関係を求める傾向にあります。(これも認知バイアス)
その際に善意や親切心といった心的なものより、金銭や見返りといった物質的なものが目に見える以上、目立つ。
可視できるからこそ、原因はそこにあるのではないかと思いやすい。見えなくて、実証不可能なものはどうしても根拠としては薄い。
結果的に「他人が利己的に振る舞っているだろう」とナイーブ・シニシズムが現れてくる。
「相手がどういう魂胆で、この行動をしたのか」は永遠にわかりません。聞いても嘘かもしれず、その証明はできません。
解釈である以上、「どう感じて、どう振舞うか」の自分の問題になります。そこからは自分のコントロール内です。
それからは自分にとって、最善の選択肢を考えることに邁進するとしましょう。
では、また。